財務基盤が明暗を分ける
LNGプラントなどの設計から施工、試運転まで行うエンジニアリング会社です。
日本国内のみでなく世界中でバカでかいプラントの建設をしています。
国内での主なライバル企業は、
です。
この3社は、5年ほど前の業界全体の不況に見舞われました。(3社のみでなく、エクソンモービルなどのオイルメジャーなども厳しい状況になりました)
不況と天候不順による追加費用の発生などが原因で、売上高・利益・受注高が大きく減少しました。
それに合わせて3社とも、2014年ごろをピークに株価が大幅下落し、現在は底を打ったように見えます。
ざっくりですが、それぞれ株価のピークから
・日揮 3分の1
・千代田化工建設 5分の1
・東洋エンジ 5分の1
になりました。
さらに、千代田化工建設は三菱商事への巨額の優先株発行による増資や三菱東京UFJ銀行からの融資
東洋エンジニアリングは主に投資ファンドが出資した優先株発行による増資がありました。
優先株が発行されると、既存株主が保有する株式価値の希薄が起こります。
さらに、一般的に優先株は普通株より優先的に配当金などの利益の分配を受けることになるので、
既存株主にとって、業績が回復したとしても、利益を受け取るのはずっと後になるのです。
一方、日揮はそういった動きは無く、今ではいち早く苦境から脱出しそうです。
その理由は財務基盤にあります。
各社の2016/3時点の自己資本比率は
・日揮 60.7%
・千代田 33.7%
・東洋 15.8%
大きな違いがありますね
自己資本は株式発行で調達した資本金と、これまでの利益の累積である利益余剰金の和です。
自己資本比率が低いということは、細かいことは考えずにざっくりいうと、
企業の実力に対して負債が多い
ということだと思っています。
この差が、不況を乗り切る体力の差となり、株価に現れたのです。
特にエンジニアリング会社は、ひとつひとつの案件が大きいので、工事期間が長く、金額も巨額です。
なので、他の業種のように毎月安定して収入があるわけではありません。
収入がなくても、負債は返済しなければなりませんし、社員に給料を払わなければなりませんし、プラントを建設するための資材を買わなくてはなりません。
つまり、しばらく収入が途絶えたとしても、事業活動を継続できる体力が非常に重要になります。
千代田化工建設と東洋エンジニアリングは、負債が多かったため、不況の際に現金が不足し、増資や融資を受けることになったのです。
多くの人は、投資判断の際に、売上高や利益に注目しがちですが、
このケースでは、財務健全性が株価に与える影響をよく表していると思います。